理事長挨拶
令和6~7年度理事長挨拶
理事長就任にあたり
公益社団法人日本障害者歯科学会理事長 野本たかと
この度,日本障害者歯科学会の理事長を拝命しました野本たかとです.偉大な先人たちの後任を担うことは大変名誉なことであり,身の引き締まる思いであります.
私は,日本全国の障害児者がいつでもどこでも適切で均質な歯科医療を受けられるようにするために活動することが本学会の使命であると考えています.それを達成するためには,多くの課題を一つ一つ解決して,全ての障害児者が安心安全に歯科医療を受診できる障害者歯科界を実現することが重要であります.本学会は昭和48年に前身の心身障害者歯科医療研究会から発足し,昭和59年に正式に日本障害者歯科学会となりました.先人たちの多くのご努力によって,学会ならびに障害者歯科医療は大きく発展してきました.令和5年には一般社団法人から公益社団法人にも認定されました.従いまして,多くの国民に寄与すべく団体としての使命がより強くなりました.これまで以上に日本全国の障害児者の歯科医療に貢献していかなければと思っております.本学会の会員は,各地域で障害者の歯科医療に貢献している方々ばかりです.また,調査・研究を通して,障害児者の歯科医療をより良くするためにはどうすべきかを常に考え励んでいる精鋭たちです.本学会には26の委員会がありますが,その会員の力を借りて障害児者の歯科医療をよりよくするために邁進しています.
自分自身が学生であった昭和の時代は,歯科受診するために1時間半かけても2時間かけても通院してくる障害のある患者さんは稀ではありませんでした.それだけ,歯科医療を提供できる場が少なかったということです.昭和の頃の障害児者は,歯科受診もままならず,大変ご苦労されていたと思います.平成,令和と時が流れ,歯科医学教育の充実や社会環境が整備されてきたことで,多くの場で障害児者の歯科治療が行われるようになりましたが,まだまだ地域によってはままならぬ状況も散見されます.よく耳にするのが都市部は概ね診療をしてくれる場があるが,都市部から離れると行き届いていない.このようにまだまだ地域格差が認められます.これも解決すべき問題の一つです.その解決策の一環として,地域活性化のために各地域に分けての研究会が発足され,積極的な活動がなされています.
障害者の歯科治療の内容も大きく変化しております.う蝕治療や歯石除去などの歯周病治療が主体だったものから,補綴治療も概ねできるようになりました.矯正治療も比較的容易に行えるようになりました.情報の時代ですので,ご本人やご家族から「CADCAMでやってください.」,「ノンクラスプデンチャーでお願いします.」などの要求もあります.しかしながら,それぞれの地域で均一な治療が受けられるかというとそうではなく,治療方針も確立されているとは言えません.これも解決すべき問題点です.その解決策として,診療の標準化・均一化を図るために診療のガイドラインも多く作られ,現在も進行中です.
また,日本の障害者歯科医療の技術は世界に誇れるものであると考えています.そのため,日本の知識や技術を国外にも普及していくことも大切であると考えています.特にアジア各国との連携を深めて,啓発活動を続けていきたいと考えています.他にも,発達期障害児者の摂食機能療法の啓発,障害特性による歯科疾患の治療計画の立て方など,進めていくべき課題がたくさんあります.
今後は,ますます日本全国の障害児者がクオリティの高い診療を受けられるよう学会としても多くのことを遂行していかなければなりません.コロナ禍にはたくさんのつらいことがあったものの,感染症対策の重要性の再認識やデジタルディバイスを用いた診療なども含む医療の在り方などが多様な変化を遂げました.このような新たな状況に直面している今,その状況に敏速に対応していかなければなりません.そのために,ニーズに敏速に対応できる障害者歯科学会を構築していきたいと思います.そのためには,会員相互に力を合わせて,何倍ものパワーとなって進めさせていただければと思います.今後もより良き学会ならびに障害者歯科発展のために,学会として邁進していきます.
どうぞよろしくお願い申し上げます.