学会紹介

理事長就任にあたり


一般社団法人日本障害者歯科学会理事長 小笠原正

一般社団法人日本障害者歯科学会理事長 小笠原正


このたび理事会および社員総会において新理事長に選出されました小笠原正です。大変光栄に存じますと同時に重積に身の引き締まる思いです。本学会の発展のためにベストを尽くす所存ですので、どうぞよろしく御願い申し上げます。


日本障害者歯科学会は、前身である「日本心身障害児・者歯科医療研究会」(初代理事長 上原進 先生、名誉会員)が1973年に発足してから49年目、1984年の障害者歯科学会の発足から39年目となります。これまで諸先輩方が日本の障害者歯科医療の確立に貢献され、着実に発展してきました。しかしながら、2020年から始まった新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより歴史に残るような災害となり、教育、医療、経済など社会に甚大な影響を及ぼしました。本会の活動も認定医試験の分散会場での実施、理事会や委員会はWeb会議、セミナーもWebとなり、様々な活動を変更せざるを得ませんでした。多くの活動が非対面型コミュニケーションへとなり、人間関係が希薄になる心配がありますが、逆にコロナ禍による対面活動の縮小をチャンスに変え、これからも障害者歯科医療の発展を進めていくことが重要です。

会の運営を考えるうえで、改めて原点を見直ししました。1980年の障害者歯科学雑誌1巻1号の巻頭言で故 酒井信明先生が「障害者を医学、心理学、教育学、社会学、法学、福祉学等々おびただしい認識分野からの情報を用いて知り、これを整理したうえで、歯科医療の舞台に動員しなければならない。これが心身障害を背負って人生を旅する人たちの福祉に貢献するための我々の精一杯の活動だろう」と記載されていることを緒方先生も巻頭言で引用されています(34巻1号、2013)。この言葉は、現在も生きています。そしてさらに経験をまとめ、整理し、実践で活かしていけるようにしていくことも私たちの使命です。つまり地域の会員が障害者歯科医療を安心、安全に取り組めるように建設的な活動を行っていくことです。会員が安心・安全な障害者歯科医療に取り組めるように地域医療のための環境作りこそが障害のある人への貢献だと考えます。

本会は、常設委員会が17委員会,諮問委員会が10委員会、計27委員会があります。そのなかで認定医委員会や専門医委員会は会員の研鑽の機会を提供し、その成果として認定医や専門医を取得できますが、日本歯科専門医機構による専門医制度も動き出すことになります。老年歯科、有病者歯科、障害者歯科の専門医として障害者、高齢者、要介護者、全身疾患を有する者などの歯科医療を担えるような専門医(名称未定)を認定し、広告可能な専門医として位置づけられるようになります。また国際障害者歯科会iADHのFellowship(認定医制度)も始まりました。日本障害者歯科学会の3年以上の会員資格で申請できます。診療ガイドライン委員会からの「小児在宅歯科医療の手引き」や「歯科診療ガイドライン」、広報委員会からの毎月の情報提供、用語委員会からの用語集などを皆様へお届けします。医療福祉連携委員会から視覚素材の提供、会員からの相談体制の確立、地域医療委員会は地域医療の発展と向上のために各地域での出前講座の開催、地域医療の問題点の抽出と対応について検討していきます。各委員会は、課題を持って2年間取り組んでいきます。

今秋、第39回日本障害者歯科学会総会・学術大会は岡山大学の江草正彦教授を大会長(準備委員長 岡田芳幸先生、実行委員長 森貴幸先生、尾田友紀先生)として中国地方障害者歯科臨床研究会が担当し、2022年11月4日(金)~6日(日)に倉敷市民会館・倉敷アイビースクエアで開催されます。11月の感染状況の見通しがわからないなかで様々な状況を想定して準備されています。テーマは“「いきる」を支援する歯科医療―地域医療と福祉の連携―”です。コロナが収束して皆さん一同が介して懇親を深めることができることを祈念しています。

令和4年3月