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Hands Only CPRはご存知の方も多いと思いますが、人工呼吸を行わない「胸骨圧迫のみの心肺蘇生法」です。AHAガイドラインでは、行ってもよいのは「心肺蘇生法の訓練を受けていない一般の方」としていますので医療従事者にはお勧めできません。つまり心肺蘇生法の訓練を受けたことのない一般の方が心肺停止に遭遇した場合に許容されている心肺蘇生法になります。しかし近年はCOVID-19の影響もあり、たとえば街の中で心肺停止に遭遇して胸骨圧迫は行っても人工呼吸を行うことは医療従事者とはいえ躊躇すると思います。その意味では適切な感染防護具がない場合にはHands only CPRだけでも行いましょう。

またHands only CPRの適用は成人に限ります。小児や乳児の心停止は心原性よりも呼吸原性のほうが多いからです。人工呼吸をしないと救命のチャンスを失うこともありますので,小児や乳児では目の前で突然倒れた(心原性と考えられる)場合のみとされています。

では、「人工呼吸は不要か?」といえば心肺蘇生法において人工呼吸は非常に大切なスキルです。Hands only CPRが通常のCPRと同等の結果であったという研究報告はありますが、理由として人工呼吸にかける時間の長さが指摘されています。人工呼吸に時間がかかって胸骨圧迫の中断時間が長くなると心肺蘇生法の効果は著しく低下します。その意味でも普段のトレーニングは大切になります。

参考文献

Sayre MR, et al: Hands-only (compression-only) cardiopulmonary resuscitation: a call to action for bystander response to adults who experience out-of-hospital sudden cardiac arrest: a science advisory for the public from the American Heart Association Emergency Cardiovascular Care Committee. Circulation. 2008 Apr 22;117(16):2162-7. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.107.189380. Epub 2008 Mar 31.

日本障害者歯科学会医療安全委員会
石垣佳希


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