第14回「アナフィラキシー ~誘因について~」
アナフィラキシーの誘因の特定は、発症時から遡る数時間以内における飲食物、薬剤、食後の運動、精神的ストレスなど、アレルゲン物質への暴露、経過に関する詳細な情報に基づいて行われます。日本におけるアナフィラキシーの誘因で最も多いのは食物、次に医薬品、食物依存性運動誘発アナフィラキシー、昆虫刺傷、経口免疫療法と続きます。年齢別にみると18歳未満では食物、18歳以上では医薬品の頻度が高いとの報告があります1)。誘因の上位にあげられる食物の内訳は鶏卵、乳製品、小麦、木の実類の順に多く、医薬品では造影剤を含む診断用薬、血液製剤を含む生物学的製剤、抗腫瘍薬、抗菌剤の順に多くみられます。
抗菌剤ではβ‐ラクタム系(セフェム系、ペニシリン系、カルバペネム系)が最も多いですが、キノロン系を含む合成抗菌剤も誘因となります。これらの統計調査のデータの7割が点滴によるものであり、調査の考察では静注という投与経路が問題点であると指摘しています。アナフィラキシー症例における死亡例でみると最も多い誘因は医薬品で、診断用薬と抗菌剤で5割を占めます2)。歯科診療で医薬品を使用時は事前の十分な問診が重要であり、使用開始後の観察、またアナフィラキシー発症時に速やかに対応できる体制が必要です。
参考文献
1) 佐藤さくら,柳田紀之,伊藤浩明,他.日本のアナフィラキシーの実態:日本アレルギー学会認定教育研修施設におけるアナフィラキシー症例の集積調査.アレルギー2022;71(2):122-129.
2) Anaphylaxis対策委員会.アナフィラキシーガイドライン2022.日本アレルギー学会.
日本障害者歯科学会医療安全委員会
吉岡真由美