第15回「感染性心内膜炎の予防的抗菌薬」
感染性心内膜炎(IE)は,心臓弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌を含む疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患です。観血的な歯科治療やスケーリング、外科手術により菌血症が発症する可能性は示唆されていますが、ブラッシングでも菌血症のリスクがあることが指摘されています1)。わが国では感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017改訂版)2)に従うことになり、予防のための抗菌薬の処方としては、基本的にアモキシシリン2gまたは30mg/kg(小児:50 mg/kg)を処置1時間前に内服することが推奨されています。βラクタム系抗菌薬アレルギーの場合にはクリンダマイシン,クラリスロマイシン,アジスロマイシンが推奨されています。同ガイドラインには歯科治療における注意事項が詳細に記載されているので一読をお勧めします。抗菌薬の投与に先立って、患者の全身状態の評価、内科等主治医への予防的抗菌薬の必要性についての対診、それから患者さんへの説明を行う必要があります。
参考文献
1) Lockhart PB, Brennan MT, Sasser HC, et al. Bacteremia associated with toothbrushing and dental extraction. Circulation 2008; 117: 3118-25.
2) 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン (2017改訂版). 日本循環器学会合同研究班 2018.
日本障害者歯科学会医療安全委員会
冨田智子