第1回「緊急時対応」
今回から医療安全委員会の企画として医療安全にかかわる情報を隔月で提供することになりました。第1回のテーマは「緊急時対応」です。
緊急時における代表的な対応は一次救命処置ということになりますが、障害者歯科治療における一次救命処置のアルゴリズムは一般に行われるものと変わりありません。ただし対象が小児であることが多いと思われますので、成人のような心原性の心停止というよりは呼吸原性の心停止の可能性が高いということになります。また小児でも反応・脈・呼吸の確認は成人と同様ですが、脈の触知は難しいことが多いので反応と呼吸が無ければ心肺蘇生(CPR)開始を考慮した方が良いかもしれません。以下AHAガイドライン2020に準じて記載します。
CPRの手順は基本的に成人と同様ですが、胸骨圧迫の深さは成人では少なくとも5㎝ですが小児では胸の厚さの約1/3になります。また胸骨圧迫・人工呼吸比は成人では救助者の人数に関係無く30:2ですが、小児では救助者が1人の場合は30:2、複数の場合は15:2になります。診療室ではまず複数の救助者で行うことになりますので15:2の割合でCPRを行うことになります。
CPRを行う際は家族が同席することで、その後のPTSD発症の割合が低下するという報告があります(NEJM 368:1008-18, 2013)。妨害になるようなら敬意をもって遠ざけることを心がけましょう。
また意識は無いが呼吸が正常の場合は嘔吐による窒息防止などの目的で回復体位を取ります。成人のように自身で回復体位を取れない場合には背中を支えて体位を保持してあげることも考慮してください。
日本障害者歯科学会医療安全委員会
石垣佳希