第22回「歯科処置に際して注意が必要な疾患〜糖尿病〜」
糖尿病とはインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気であり、原因にはインスリンの分泌低下とインスリン抵抗性の2つが挙げられます。分泌低下とは膵臓β細胞の機能低下により十分なインスリンを作れなくなる状態を指し、抵抗性とはインスリンは十分な量は作られているものの、効果が低下している状態を指します1)。この2つの原因による相対的なインスリン作用不足が糖尿病の本態です。
糖尿病の病態には人種による差があり、日本人を含めたアジア人は欧米人と比較してインスリン分泌能が低いことが知られています2)。欧米人は正常耐糖能から糖尿病になるに従って急激なインスリン抵抗性の増加を示しますが、アジア人では正常耐糖能者であっても、インスリン分泌能が低く、加齢や肥満などのインスリン感受性が低下する事態が起こると、たとえそれが軽微なものであっても、インスリン分泌を増加するという代償ができなくなり糖尿病を発症します。このようにアジア人は欧米人より低いBMIでも耐糖能異常をきたしやすく、BMIが25程度の小太りでも糖尿病を発症する可能性が高くなり3)、肥満でなくとも糖尿病になりやすいという特徴があります。
日本では糖尿病患者が年々増え続けていますが、糖尿病を放置すると網膜症、腎症、神経障害などの合併症から、失明や透析治療が必要な状態に陥ることがあり、患者のQOLの著しい低下や医療費の増大を含めた大きな負担をもたらします4)。糖尿病と歯科との関係は広く知られるところであり、歯科医療に従事するわれわれとしても、正しい理解に基づいた歯科的な管理と適切な情報提供を行うことが求められます。
参考文献
1) 糖尿病とは.国立危機管理研究機構 糖尿病情報センター
2) Fukushima M, et al: Insulin secretion capacity in the development from normal glucose tolerance to type 2 diabetes. Diabetes Res Clin Pract 66: S37-43, 2004.
3) 卯木 智 他. 日本人糖尿病患者における肥満合併の現状と問題点. 糖尿病 63(7)422-426, 2020
4) 糖尿病.厚生労働省
日本障害者歯科学会医療安全委員会
冨田智子