第23回「医療的ケア児の現状と歯科的課題」
医療的ケア児は、「日常的に医療的ケアを必要とする児(18歳以上の高校生を含む)」と定義され、人工呼吸器管理、気管切開、胃瘻・経管栄養、てんかん管理など、多岐にわたる医療的管理を必要とします。在宅の医療的ケア児数は2万人を超え、15年で2倍に増加し、中でも人工呼吸器を必要とするこどもは、2021年には4人に一人と、2010年以降、在宅で必要とする医療の重症度が特に上がっています1)。こうしたなか、医療的ケア児とその家族の生活は、「社会全体で支援しなければならない」とされ、令和3年、医療的ケア児の支援に関する法律が施行され、医療的ケア児のさらなる支援の拡大、レスパイト、就労支援等支援施策の充実、医療的ケア児支援センターの強化、災害時支援の在り方等を、踏まえた法改定と整備が進んでいます2)。
医療的ケア児の生活は、医療・福祉・教育の多職種連携によって支えられていますが、口腔領域に関してもまた支援拡充が必要とされています。佐藤の報告3)では、大規模診療報酬データベースを用いた医療的ケア児の歯科受診率は54.3%にとどまり、訪問歯科診療の利用率は6.8%と低く、すなわち半数近くの子どもが、う蝕や、歯肉炎の予防・早期発見・口腔機能支援の機会を得られていないことを示唆しています。また、在宅移行前のNICUやPICUを有する病院における医療的ケア児に対し、口腔内診査を含む歯科医療の実施を調査した報告4)では、介入を行っているのは54.7%であり、口腔内にトラブルが生じていない乳幼児が歯科や口腔外科を受診する機会は少ない、または無いのが現状です。この報告では歯科受診経験を持たないまま在宅に移行する医療的ケア児も多数存在すると考えられます。さらに、在宅の医療的ケア児を対象とした髙井らのアンケート調査5)で、歯科受診経験がない医療的ケア児が52%であったと報告しており、調査対象の平均年齢が4.7±4.0歳であることを考えると、在宅移行後の早期に歯科を受診する割合も現状では低いと予想されています。
参考文献
1) こども家庭庁 医療的ケア児の現状について(2026年1月時点)
2) こども家庭庁 医療的ケア児およびその家族に対する支援に関する法律の一部を改訂する法律について 第15回子ども・子育て支援等分科会 (令和8年8月19日)
3) 佐藤 美寿々.医療的ケア児およびその家族における歯科受診の実態と課題:大規模診療報酬データベースを用いた調査研究 厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業(身体・知的等障害分野)医療的ケア児に関する実態調査と医療・福祉・保 健・教育等の連携促進に関する研究 平成30年度総括・分担研究報告書
4) 小方清和 他.病院歯科における医療的ケア児への歯科介入についての実態調査.小児歯科学雑誌 61(2):57–66,2023
5) 髙井理人 他.小児在宅歯科医療に関する全国実態調査 日本障害者歯科学会誌 42:91-98,2021
日本障害者歯科学会医療安全委員会
林 英子(鼓ヶ浦こども医療福祉センター 歯科)